製品とソリューションIT基盤構築

IT基盤マネジメントの向上

業務システムや情報システムを載せるIT基盤は、いまや企業の重要な経営戦略の一環といえる。業務に最適化した効率的なインフラであることはもちろん、障害に強く、可用性が高いことなど、多くの厳しい条件がIT基盤には求められている。

Q1. IT基盤構築の背景は何ですか?

DR、BCPに対応したシステム

IT基盤とは、特定の情報システムが動作するように、コンピュータやサーバ、PC端末などのハードウェア、インターネットやLANなどのネットワークを設計し、設置、設定を行うことです。大規模な企業のIT基盤は、外部のベンダーに構築を依頼することが一般的ですが、大陽日酸グループでは、グループの情報システム企業であるTNSSがその構築を担っています。

IT基盤を作り上げる上で最も大切なことは、ユーザーの業務に精通し、どのようなシステムを構築したいのかイメージを共有することです。TNSSは大陽日酸グループと一体となり、ユーザーに最も近い立ち位置でIT基盤の構築、マネジメントを行っています。グループのIT基盤は、業務環境の変化やIT技術の進歩に合わせて、3~5年ごとに構成を大幅に見直す大規模改修を行っています。

IT基盤マネジメントのテーマは、まず、どんな場合でも止まらない可用性を上げることです。1年365日、24時間稼働するシステムを目指し、障害などのダウンタイムをいかに短かくするかを追求しています。また、東日本大震災を機にDR(※1)の意識が高まり、災害に強くBCP (※2)を高める基盤にすることも重要なテーマとなっています。

※1 DR

Disaster Recovery。情報システムが地震や風水害などの自然災害や火災、サイバー攻撃などで申告な被害を被った時に、その被害を最小限にとどめるための予防的戦略。耐震性向上や停電対策や迅速な復旧のための対策、システムの機能をバックアップで起動する措置などがある。

※2 BCP

Business Continuity Plan。事業継続計画。企業が災害やシステム障害で深刻な被害を受けた時でも、業務を継続できる方策を準備し、事業が滞らないように計画すること。

Q2. IT基盤構築の役割・特徴・意義は何ですか?

データセンターの活用で万全の体制

10年前まではオフィス内にサーバが設置されていましたが、1カ所に集中すると地震などの自然災害や火災などで被害を受けた時、すべてがダウンしてしまいます。DRの観点から、サーバを営業拠点から離れた関東と関西、2カ所のデータセンター(以下DC)に移設しました。通常は1カ所のDCに接続し、もう1カ所のDCはミラーサーバとして常にデータをバックアップしています。そして、接続拠点が被害を受けた時、もう1カ所の拠点に接続を切り換え、すぐに復旧できる体制に変更しました。

システムの障害は災害以外にも様々なところで起こります。ネット環境もその一つで、インターネット回線に障害が起こった場合を想定して、違う会社の回線を2本引き、備えています。このように様々な場合を想定し、サーバや回線、その他の機器も常に2個ワンペアを用意し、障害の際、ダウンタイムを短くするように設計しています。

また、前回の改装では、SaaS(※3)を導入しました。それまでは、ローカルのPCにOSやアプリを載せて動かしていましたが、すべての端末に対してソフトウェアのアップデートやパッチ(※4)適用などの管理をすることは、管理側の業務が煩雑になるだけではなく、利用者にも端末のメンテナンスの作業が必要で負担がかかっていました。また、年々高度化するサイバー攻撃など、セキュリティの観点からも脆弱性が指摘されるようになりました。そのため、DCの基盤上にPC端末のデスクトップ環境を仮想化して集約、ユーザーは端末からネットワークを通じて仮想マシンに接続し、デスクトップ画面を呼び出して操作するVDI (Virtual Desktop Infrastructure=仮想デスクトップインフラ )環境を実現しました。

※3 SaaS

Software as a Service。インターネット経由のソフトウェアパッケージの提供。サービス提供者側のコンピュータでソフトウェアを起動させ、ユーザーがネットワークを通してソフトウェア機能をサービスとして利用します。

※4 パッチ

Patch。プログラムを修正するための追加データ。

Q3. IT基盤構築の効果はどのようなことでしょうか?

VDI、SaaSで、デバイスと場所と時間を問わずに業務効率化

VDIではユーザーにはVDI専用のシンクライアント(※5)が配布され、使用時にはネットワークを通じてサーバに接続し、自分のデスクトップ画面を呼び出して利用します。サーバで集中管理するため、ソフトウェアの追加や更新などのメンテナンスが容易になります。また、手元のコンピュータにデータやプログラムなどを保管しないため、USBストレージなどを通じたウイルス感染や情報漏えいを防ぎやすくセキュリティも向上しています。

SaaS方式にしたことにより、ネット環境さえあれば、どのPCからでも自分用の画面・環境を呼び出して使え、PC以外の携帯端末やタブレットからでも入ることができます。出張や出先でもオフィスと同じデスクトップ環境で仕事ができます。最近増えているテレワークにも対応できるなど、仕事の自由度が上がり、大幅に利便性が向上しました。

SaaS方式のもうひとつのメリットは、リソースを集中することでコスト削減できることです。VDIではDCの1台の物理サーバで約20人が仕事することが可能で、大陽日酸グループ約8,000人の社員を20分の1のサーバで処理することができます。また、ユーザーが使用するPCは、最低限のスペックでVDI環境に対応した安価な専用PCであるシンクライアントを使用するため、トータルでは大幅なコスト削減を実現しています。

※5 シンクライアント

Sアプリケーションやデータをサーバ側で管理し、クライアントのPC端末の機能を最小限にする仕組みをいいます。「シン(Thin)」は薄い、少ないを意味します。